素材があっての料理。生産者の皆様は、ともにお店をつくっているような大切な存在です。同じ道南の地で上質な食材を育てている皆様も、この地の豊かな「風土」そのものであると考えています。ごく一部ではありますが、そんな生産者の皆様の食材へのこだわりをご紹介します。

北斗市の「おぐに牧場」では、約100頭の黒毛和牛が暮らしています。
代表・小国美仁さんの理念は、牛の生命力を引き出すこと。
また、「肉が食卓にあがるそのときまで責任を持って」
という思いから、顔の見える対面販売にもこだわっています。
小国さんは、就農する前から、従来の畜産に疑問を抱いていました。
「管理することを優先して、牛たちを狭い空間に隔離する。
効率良く太らせようと、化学肥料を使ったものをどんどん食べさせる。
人間の都合で、本当にいい肉がつくれるとは思いません」。
たとえば、牛が自ら草を求めて、歩き回れるようにすること。
飼料は、地元産をはじめ安全なものを、体調を見ながら与えること。
そして、ストレスを感じさせない信頼関係を築くこと。
牛が本来あるべき姿を目指し、そのエナジーを引き出すことで、
赤身まで深い旨味のある「おぐに和牛」はつくられます。
22歳のとき、畜産と農業経営について学ぶためにアメリカへ。
アイダホ州の牧場で、2年間研修しました。
そこで感銘を受け、小国さんのルーツとなっているのは、
「家族と郷土を愛し、牛と生きていく」というライフスタイルです。
この地の自然の恵みを受け、牛のペースに合わせて暮らす。
そんな理想を追求し、生命力のある肉を提供してくれる生産者が
同じ北斗市にいることを、誇りに思います。

私が大切にしているのは、牛が持つ本来の生命力を引き出してあげることです。
ですから、肉には個体差が生じてきます。
それを受け入れてくれるどころか、楽しみにさえしてくれるのが、関川シェフです。
肉の個性に応じて、調理法を変えながら、素材の味が引き立つ、一皿に仕上げてくれます。
シェフのような理解者がいるからこそ、生産者としての楽しさ、やりがいを感じています。