素材があっての料理。生産者の皆様は、ともにお店をつくっているような大切な存在です。同じ道南の地で上質な食材を育てている皆様も、この地の豊かな「風土」そのものであると考えています。ごく一部ではありますが、そんな生産者の皆様の食材へのこだわりをご紹介します。
群を抜いた旨味と、きめ細かい歯ごたえ。
大沼国定公園の近郊、横津岳のふもとに位置する七飯町に、
しいたけという食材の可能性を広げた、「王様しいたけ」がいます。
かさの直径は、10cm以上。大きくて、肉厚。
その見た目だけでも、「王様」の名にふさわしい存在感がありますが、
「大きいしいたけを、つくりたかったわけではありません。
おいしさをとことん追求したら、大きくなってしまったんです」。
代表の福田将仁さんは、笑顔でそう仰います。
1994年、福田さんは七飯町へ移り、農園を設立。
しいたけ栽培の命である水に、横津岳の天然伏流水を使うためです。
菌床には、養分が豊富な道産どんぐりの木を100%使用し、
ハウス内は、自然環境の温度や湿度に加えて、季節の移ろいまで再現。
6ヵ月間、じっくりきめ細かく、菌種を培養します。
そこまで品質にこだわっても、大きすぎるため、市場では規格外。
ブランドとして評価されるまで、販売に苦労する日々が続いたそうです。
転機となったのは、権威ある品評会で日本一に輝いた2009年。
農園設立から15年。「王様しいたけ」と名付けられたのもその頃です。
自然の森とできる限り同じ、ぜいたくな環境をつくること。
そして、信念を貫き、「王様」にまで育てあげたこと。
「王様しいたけ」は、福田さんのピュアな情熱そのものです。
関川シェフとはじめて出会ったのは、函館の百貨店で、試食販売をしているときでした。
その後、わざわざ私の農園まで見学に。
しいたけ栽培の様子を見る真剣なまなざしは、今でも忘れられません。
そして、私自身、シェフの料理の大ファンです。
素材の魅力を引き立てたいという気持ちも、ひしひしと伝わってきます。
生産者冥利に尽きる、うれしいことです。