素材があっての料理。生産者の皆様は、ともにお店をつくっているような大切な存在です。同じ道南の地で上質な食材を育てている皆様も、この地の豊かな「風土」そのものであると考えています。ごく一部ではありますが、そんな生産者の皆様の食材へのこだわりをご紹介します。
せたな町に、完全放牧酪農を営んでいる「村上牧場」があります。
日本海を間近に望む、ガンビ岳と呼ばれる高台に位置。
約50頭の牛たちは、オーガニックの牧草地でのびのびと暮らし、
海風が運ぶミネラルを含んだ、牧草や草花を食べています。
2008年、牧場内にチーズ工房を開設したのが、村上健吾さんです。
道内の観光牧場などで経験を積み、Uターン就農。
「牛飼い」という立場を生かし、チーズづくりに励んでいます。
村上さんが、チーズをつくる上で大切にしているのは、
まず何よりも「いい牛飼い」であること。
そのため、過度な飼育や搾乳などは、一切しないと仰います。
「自然や牛たちのリズムに合わせることで、
その恵みを少し分けてもらう。根底にあるのは、そんな思いです」。
化学肥料や農薬を排し、自然の循環を重視する理由も、そこにあります。
また、「自分は手を添えるだけ」と仰るとおり、
牧場特製のミルクの風味が生きるように、加工を行っています。
地元の海洋深層水塩を使って、じっくりと熟成。
その地ならではの魅力が濃縮された、素直なチーズができあがります。
牛たちに、無理をさせないこと。そして、自然を壊さないこと。
村上さんが理想とするのは、持続可能な酪農。
牛と人間が、もっとシンプルに共存できることを目指しています。
私がチーズ工房を開設したばかりの頃から、関川シェフとは交流があります。
当時、お互いに意見交換をさせていただきながら、多種多様なチーズをつくれたことは、
今の私のスタイルを、確かに築いています。
料理人と生産者を超えた関係が、私たちの間には、あると思っています。
この地に根を張り、これからも一緒に歩んでいく、大切なライフパートナーです。